<A HERF=http://www5c.biglobe.ne.jp/~akihiro>骨髄移植の方法</A>

骨髄移植

  白血病の目標は正常な細胞を壊さないで、出来るだけたくさんの芽球を退治する事。

  でも、白血病細胞を退治するのに充分なだけ 化学療法や放射線治療をやると

  正常な細胞も まきぞえをくって 少しやられてしまいます。

  それじゃー まずいんです。

 

  もし、すっかり骨髄を破壊してから、新しい健康な骨髄を移植してみたらどうだろう?

  これが、骨髄移植です。

  骨髄移植のもとになっているアイディアはそんなに難しくありません。

  骨髄全部を(いいモノも悪いモノも)を めちゃくちゃにやっつけて、

  その後 新しい骨髄でおきかえようというわけです。

 

  骨髄を全部壊してカラカラにするのは簡単です。移植の手術の手技も

  そんなに難しくはないそうです。

 

  この方法で、長い間 寛解を続けている白血病の患者さんもかなりいるんです。

  骨髄移植を難しくしているのは、次に述べる事からです。

 

1つ目の問題

  貴方に提供されるしてくれる人がなかなか見つからない。

  骨髄移植にはHLA抗原が重要になる

  骨髄提供者があなたと違うHLA抗原をもっていたら

  提供者の細胞をあなたの免疫系が あっという間に壊しにかかります。

  HLA抗原の適合した人間は

  君の家族 特に 兄弟や姉妹のなかに見つかる事が多い。

  もしあなたが一卵性双生児なら、双児のも一人が完璧な骨髄提供者です。

  1卵生の双生児は2人ともまったく同じ HLA抗原をもっているから、

  もし、双生児じゃなかたら

  家族の中からHLA抗原の似かよった人を 提供者に選ぶわけだけど

  これは なかなか難しい事で たとえ大家族でも、適当な提供者が見つかる事は、

  そうたびたびはない。

 

2つ目の問題

  移植がおこなわれる前にあなたの骨髄を完全に破壊しなければならないということ。

  新しく移植した骨髄が 壊されないようにするためにあなたの免疫系を完全にストップさせる必要がある。

  そうすると この期間中 すべてに感染に対し 全く無防備となるので とっても危険なんです。

  だから、この間は 感染するもとになるものから 隔離された場所

  すなわち、病院の特別の部屋に入れられることになる。

  この隔離は あなたを守るために行われる。抗生物質 輸血 それから隔離。

  これらが この危険期間中に あなたの守るためにとられる手段。

  だから、あなたは何週間かを一人ですごす覚悟が必要です。

  面会も許可されない事が多い。医師や看護婦も特別なかっこうして入らなくてはならない。

 

もし、あなたの先生が

骨髄移植こそ あなたにとって最良の治療法だと決定し

ぴったり合う骨髄の提供者が見つかったら、いよいよあなたの骨髄を 放射線や薬剤でたたいて破壊する。

それから2〜3週間 あなたは隔離室に入らなければならないだろう。

この間 あなたには免疫機能を抑える薬剤が投与される(免疫抑制療法)。

移植をうける日 骨髄提供者は手術室で全身麻酔でねむらされるか 腰椎麻酔をかけられるか

どちらかの方法をとられる。

痛くないようにした後で、提供者の腰の骨から 何回も何回も 骨髄を採取する。

この骨髄をよく検査した後で あなたの体の中に入れるんです。

骨髄は 普通の輸血みたいに静脈内に注入します。

そうすると 入れた骨髄細胞は あなたの骨髄内に移動し、

うまくいけば そこで成長し始める。

 

骨髄移植での あなたの役割は それほど大変じゃありません。

やられていればいいんですから。

 

でもそのあいだ中、先生達は とっても忙しくなります。

一時にたくさんの骨髄の検査をしなきゃならないことを考えてみてください。

それから 骨髄を提供する人も大仕事ですよね!

骨髄がもらえるなんて 凄い幸運なんですよ。

 

移植後 あなたは また 隔離室に戻らなくてはならない。

あなたの体が 移植された細胞に対し 拒絶反応をおこしたら

特に注意深く経過を観察される。

まだ、感染のおそれが全くなくなったわけじゃないんです。

また悪いことに それに加えてもう1つの新しい問題がおこってくる。考えてみよう。

新しく入れた骨髄は 提供してくれた人の免疫系ですよね。

その細胞は 提供者の体にあったときには 他からの侵入者をやっつける働きをしていたわけだろう。

だから あなたの体に入れたあと それらの細胞は あなた自身の細胞を敵とみなして破壊工作をはじめようとする。

入れられた骨髄自身は、移植されたことなんか 全く知らないからです。

自分と違う細胞を見つけたら、ただただ 自動的にそれを破壊しようとするんだ。

 

こんな風にして起こる問題を

移植片(いしょくへん)と宿主間(しゅくしゅかん)の拒絶反応 GVHDと呼ぶ。

骨髄移植を受けた人にとって GVHDは避けられない問題です。

GVHDは軽いこともあるし、逆にひどいこともある。

その程度は、 あなたの抗原と提供者の抗原がどれほどうまく適合しているかによって決まります。

GVHDの症状と徴候は 病気の重さによって色々あります。

皮膚が発疹だけの事もあるし、皮膚に水ぶくれができたり

下痢、黄疸がおこるほどひどいのもある。

そして それに加えて恐ろしいのは 重症の感染症だ。

 

 

あなたのからだが、入れられた骨髄を うまく受け入れて 細胞が 骨髄の中で成長を始めたと 先生が判断したら

隔離が解除される。 すばらしい日です。

 

薬は続けなければいけないかもしれないけれど

人によっては もう全然 飲まなくてもいいこともある。

でも ちょくちょく 外来に通わなければならないのは、前と同じです。

 

今まで かなりのケースで骨髄移植が成功しているから

先生達も この治療法には 充分期待がもてるとおもっている。

でも失敗したケースも また たくさんあるんだ。

 

あなたが隔離室に入っている間、あなたの周りの人たちは 期待と不安で一杯の何週間をすごす。

上に書いたような いろいろな理由で

この方法は(骨髄移植)は そう軽々しく やれない。

ふつうの方法で あなたの白血病をコントロールするのがちょっと難しいかなと

先生が判断してはじめて移植を考える。

もし、あなたがALL(リンパ性白血病)で 今は寛解中だけど

以前に何回か再発を起こしているといった場合にも移植をしようか ということになる。

あなたがAMLなら もうちょっと早い時期に 移植を考えるかもしれない。

1回目の寛解中 やってしまうかもしれない。

なぜなら、AMLの方がALLにくらべて薬も放射線も少し効きが悪いからです。

 

骨髄移植の経験を積むにつれて 先生達はそれにともなう合併症をどう治療すればいいかが わかってきた。

今でも 毎日毎日 確実に 治療法は進歩している。

抗生剤のサイクロスポリンAは重大だったGVHDを防ぐために とても役に立ているし

ある種のウィルス感染症と戦うためには

アシクロピール(ゾピラックス)と言う薬が 使えるようになった。

HLA抗原についても、前よりたくさんのことがわかったので、

あなたと、あなたに骨髄をくれる人(ドナー)とのぴったり度(適合性)の検査も

より 正確になってきた。

 

いつの日か、ドナーさえも いらなくなってしまうかもしれない。

 

あなたが 寛解にあるうちに あなた自身の骨髄をとりだし

そこから のこている白血病細胞をとりさって、

健康な細胞だけを育てるような方法も 実際に研究されている。

 

これがうまくいくようになれば

再発したときには、あなた自身の骨髄を使っての骨髄移植がやれるようになる。

そうすれば めんどうな合併症も 起こらなくてすむ。

そうはいっても 多くの問題が残っていて、まだまだ研究の途中といわざるおえないのが現状なんです。

 

私としては、遺伝子治療に期待しています。はやくドナーのいらなくなる日がくることといいなぁ!

 

骨髄移植の説明は終わりです。          

                                    「君と白血病」より

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